ホーム

コンテンツ
あめいろぷろじぇくと!
Pクエスト(仮)
Twikker
わーどもんすたぁ
サモンズコール

小説(継続中)
神サマの忘れ物
12345
678910
1112131415
1617181920
212223

あの青空に祈りを捧げ
12345
678910
1112131415
1617181920
2122232425
2627282930
313233

即興小説トレーニング置き場
12

小説(完結)
突出幼心あくりょうちゃん
12345
678910
1112131415
1617181920
21

オレと兄貴と私がいるから
12345
678910

祭囃子〜記憶の隅に〜
1234

祭囃子〜聖なる夜に〜
12

ボクはネコ
1

フタツヤネノシタ
12345

魔女の契約
1234

暗黒の契約
12345

いのししレース ピキョ村のキピ
123

おにぎり落ちたそのまま食べた
12345

天使見習い頑張らない
1234

せくすちぇんじッ!
12345
678910
1112131415
1617

俺が我が家にやってきまして……。
12345
678910
1112131415
1617181920
2122232425
2627282930
31323334

小説(二次創作)
メルト
1

ある死神は
12345

メルト 第1話

メルト:melt 「柔らかい」が原義 
融ける 次第に無くなる 次第にやわらぐ 流れるように響く 

テーブルの上に辞書とノートが共に開かれたまま置かれていた。ノートには、たくさんの英単語や意味が書かれている。

カーテンが閉じられた薄暗い部屋。カーテンと窓の隙間から、光が差し込んでいる。

「ううん……」

テーブルの近くにあるソファーから、間抜けな声を出し起き上がる一人の少女。上半身を起こして一回背伸びしてから立ち上がる。眠そうな顔をしている少女は目を擦りながらカーテンを開けた。その瞬間、朝日が部屋いっぱいに入り込んだ。部屋の中が明るくなり、少女は一望する。テーブルの上の辞書とノートが目に入った。

「そっか、このまま寝ちゃったんだ」

そう呟き、同時に大事な事を思い出した。

*

私は、テーブルの上の辞書を退かして、出てきた携帯電話を開き、メールを確認する。

『明日、会える?』

昨日着たメールだから、今日のことである。彼から着たメール。何度みてもニヤニヤしてしまう。もちろん答えは『OK』だ。

私はこの辺りの高校に通う学生で、一つ上だけど彼も高校生である。如何して出会って、如何してこのような関係になったかは正直覚えていない。ふとしたことで、お互いに距離を縮めて今のような関係になっているのは覚えているんだけどね。

待ち合わせは10時に駅前。今は9時。駅までは徒歩15分。ちょっと寝すぎたかな。早く支度しよう。

私は洗面台の前に立って、顔を見る。昨日メールを受け取った後、思い切って切った前髪。「どうしたの?」って聞いてくれるかな? 聞いてくれたら嬉しいな。

髪を整えて、顔を洗う。そして、歯ブラシを口にくわえて部屋に戻る。今日の天気はよさそうだけど、一応確認しておこう。テレビの電源を入れて、ニュースを放送しているチャンネルに合わせる。あ、丁度、天気予報をしてる。

『今日は快晴でしょう。天気が悪くなっても、雲が薄っすら空を覆うくらいで、一日中降水確率は0%です』

良かった。私はすぐ歯を磨いて歯ブラシを戻してから、バッグの中を見る。

「……うん。大丈夫。そうだ、念のため、傘を入れておこう」

一応、折りたたみ傘を入れておく。

「よし」

私はバッグをテーブルの上において、服を脱ぎ捨て、勝負服を着る。

ピンクのスカートにお花の髪飾り。バッグを持って、洗面所の鏡を見る。今日の私はかわいい……よね。うん、絶対かわいいの!

――私は、家を飛び出した。


***2

私は早く彼に会いたくて、走って駅前までたどり着いた。9時45分。彼は、銅像に寄りかかっていた。

「待った?」

私は彼に声をかけた。彼はいつも、私と会うときは電車を使ってここまで来てくれる。私が電車を使って彼に会いに行く事は少ない。それに、いつも先に来ているのは彼のほうだ。

「45分遅刻」

「えっ? 嘘でしょ?」

私は思わず声を上げる。

「冗談。15分早い到着」

「ひっどーい」

「悪い」

頭を掻いて微笑む彼を私はぽかぽかと何度も叩いた。

「……じゃあ、何処行こうか?」

「どこでもいいよ」

「そっか、じゃあ……」

私と彼は歩き出した。別に何処へ行こうって訳ではないけど。

彼の顔を見ていると、気がついて彼が私の方に向いた。でも、私はすぐに顔を戻す。何だか、溶けちゃいそう。英語で何だっけ……まぁいいや、後で確認しよう。今まで、彼に好きだと言ったことは無い。それに、絶対言えない。恥ずかしいもん。目もあわせられないし……でも、恋に恋なんてしないから。だって、君のことが好きだもん。

トントン。

「……ん?」

突然、後ろからつつかれた。誰だろうと思って立ち止まった。それに気がつき彼も立ち止まる。振り向くと、とても長いツインテールにグレーとグリーンがベースの服を着ているちょっと変わった格好をしている女の子が立っていた。年は私と同じか、少し下くらいかな? その子は何かを差し出していた。私のお気に入りのハンカチだ。

「あ、ありがとう」

それを受け取りお礼を言うと、ニコニコして私たちに背を向けて走っていった。誰なんだろう?

「良かったな」

「あ、うん」

あ、彼と目を合わせることが出来た。しかも、ごく自然に……もしかして、あの子のお陰かな?

***3

特に何処へ行こうという事も無く、彼と駅付近の大通りを歩いていた。「晴れてよかったね」なんて彼と話した矢先。突然、雲が覆い始めてポツリポツリと雨が降ってきた。

「あ……」

私が手を出すと、水滴が手のひらに乗っかる。これくらいならかわいいなとか思いながらその水滴をさっきのハンカチで拭き取った……瞬間。本降りになって全身を濡らし始めた。天気予報の嘘つき。土砂降りじゃん。

私は急いでバッグの中の折り畳み傘に手をかけた。彼はというと「俺、傘いらね」と言わんばかりにフードを被っていた。なんだ、折角持ってきて一緒に入れてあげようと思ったのに……私は残念な気持ちでため息をつく。

「……傘。持ってきてくれたのか?」

私の仕草で感じ取ってくれたのか、彼はフードを取って私の方を見て、微笑む。私は急いで傘を広げて差す。

「しょうがないから、入ってやるよ」

そういいながら、彼は傘を持つ私の手を握って傘の中に入る。小さいから方がぶつかった。それに私の左手が彼の右手と触れ合う。ポツポツと音をさせる傘。彼の息遣いや温もり。何もかもが近くに感じた。そこで生まれるこれまでにない感情。これが、恋?

息が詰まりそう。手が震える。ドキドキする。顔が熱い。きっと、顔が真っ赤になっているに違いない。彼の歩調に合わせて私も歩く。手を伸ばせば届く距離に彼がいる。私の心臓の音が彼にも聞こえたらどうしよう。恥ずかしい。彼は私の気持ちに気がついてくれるかな? 思いよ届け。

彼が一歩あるくごとに、気持ちが強くなる。駄目……時間が止まるなら止まって。彼に話しかけられただけで涙が出てきそう。でも、嬉しくて、このまま死んじゃうかも。


――気がつくと、前に駅が見えてきた。そうか、もう時間なんだ。

彼は今年受験だ。彼には時間が無いのである。それでも、私に会いに来てくれる。私はそれだけで幸せ。だから、彼と決めたの。一緒にいる時間は三時間って。そして、もうその三時間が経とうとしていた。

近くて遠い彼。もう会えないかもしれない。ちゃんと手も繋いでないのに。一度でもいいからちゃんと手をつないで欲しい。

「じゃあ、またな」

彼は傘から手を離した。その瞬間、覆うものが何も無くなった私の手は一気に冷たくなった。私は駅の屋根の下だけど傘を差している。彼が遠くに行ってしまう。もうバイバイしなくちゃいけないの? 最後に、お願いしたかったな。

――抱きしめて。

なんてね。手も繋げてないのになに思ってんだろうね。私。

トントン。

「……ん?」

突然、後ろからつつかれた。誰だろう?

振り向くと、ハンカチを拾ってくれたツインテールの女の子が立っていた。

「あなたは……誰なの?」

私が聞くとツインテールの子が両手を手を自分の胸に当てて歌い始めた。



――すごい綺麗な声だった。あの子の歌を聞いている間、違う世界にいたような感じだった。何故かわからないけど私の頬を雫が伝っていた。私はあのハンカチで、目を拭いた。次に目を開けたときにはあの子がいなかった。

「あれ?」

私が呆然と立っていると、また後ろからトントンとつつかれた? 振り向くと、彼がいた。

「え!?」

思わず声を上げる。

「悪い。忘れ物」

そう言って、彼は私の右手に何かを握らせた。すぐに見てみると、大きな飴だった。どうして? 私は彼を見る。

「バレンタインのお返し。まだ2月だけど、次、会えるのが何時になるかわからないから早めにな」

「……ありがと」

私は、顔を下に向けてしまった。駄目。このままじゃ、また泣いちゃう。

ドンッ!

突然、今度は後ろから押された。こんなところで立ち止まってるから誰かとぶつかったのかな? でも、ふと後ろをみても誰もいなかった。何て、思っていると柔らかい何かにバランスを崩した身体を受け止められた。

「大丈夫か?」

顔を上にあげると、彼の顔がすぐそこにあった。もしかして、抱きしめられてる? 私は、こんな泣き顔を見られるのが恥ずかしくて彼の身体に顔を埋める。

「どうした?」

彼が心配して声をかけてくれる。私は呟くようにこういった。

「私、君のことが……好きなの」


――もしかして、彼とああなれたのってツインテールの女の子のお陰だよね? そう思いながら家に帰ってきた私はあの子のニコニコ笑顔を思い出しながら閉じられていた辞書を開くのだった。
AMaRo Project. 2014