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神サマの忘れ物
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あの青空に祈りを捧げ
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即興小説トレーニング置き場
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突出幼心あくりょうちゃん
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小説(二次創作)
メルト
1

ある死神は
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ある死神は 第1話


「はぁ……」
 空からは冷たい雪が振っている。
 夜空を覆う、闇色になった雲をこの雪が照らしているようにさえ思う。
 口からくわえていたタバコを抜き取って、息を吐けば真っ白な空気が空へと昇っていく。
 煙か、俺の息か。まあ、どちらでもいい。
 ここはマンションの屋上で、フェンスに背を預け横目で目下を見れば、車がミニカーのごとく行列をなしている。
 運転手は何のためにここを走り、誰が待っているんだろうか。
 一台一台の考えを知ることなどできるわけでもなし、理解したくもない。
 俺を待つ人間も、かつては存在していた。はずだ。
 だが、今はそんな人間がいない。
 ただ一人、積もりつつある雪の上。雪を吐き出す雲の下。マンションの屋上でタバコを吸って、有害な空気を吐く。
「で、俺に残された時間はもう少ないんだな」
 短くなったタバコを、雪の上に投げ捨て正面に視線を戻す。
 正面には、一人の少女が立っている。歳は二桁あるかないかくらいの外見。
 赤い瞳からは、一筋の光が彼女の頬を伝っていた。
「……」
 薄い栗色の少女は答えない。
「まあ、最高とは言えないけど、いい人生だったよ」
 怒りも、悲しみもしない。
 どうせ、待っている人なんて誰も居ないんだ。せめて、彼女の前だけではいい格好をさせてくれよ。
 俺はただの人間で、彼女はそうではない。
 一度、深く息を吸ってから白い息を吐く。
 白い空気は、薄くなって消えていく。まるで、俺の生き様のように。
 雲は雪を履き続け、遠い地上からは車の悲鳴が聞こえるかのようだ。
 フェンスに背を預けて、俺は彼女に向かって声をかける。
「"最期"に一言でいいから、何か言ってくれよ。寂しいじゃないか」
「……」
 彼女の頬から雫が落ちる。このままにしたら、その眼が凍ってしまうのではないかという程に。
「……ごめんね」
 そんな彼女がようやく口を開いたかと思えば、謝罪の言葉。
 
 そして――

   *

 彼女と出会ったのは、数日前のことである。
 寒いけれども、雪とは無縁な晴々したある一日だった。
 何を思ったのかは今でもわからない。でも、何故か俺は人ごみのある場所へと繰り出していた。
 日々の疲れを感じると、何故かきたくなる。わざわざ疲労を溜めてしまいそうなその場所に。
 今日もやっていたことに嫌気が差し、この場所へとやってきたのだ。
 休日になると、人がごった返すファッションに特化した街。平日の昼間はまだ人が少ないと思える。
 だからといって、俺はファッションに興味なんてなく、目的なんてあるはずもない。
 ゲームセンターで時間を費やしたはいいが、他にやることがなくなってしまい、帰るにもまだ早い時間だ。
 さっさと家に帰って、再びやるべきことに取り掛かればいいのに。今日だけは、ここにいようと思ったのだから、ここにいればいい。
 喫茶店にも、ファストフード店にも寄らず、駅前にベンチ状になった場所に腰を下ろして、スクランブル交差点を行き交う人々や、車を観察するだけである。
 交差点の信号が青色になれば、たくさんの人が一斉に進み始める。
 赤色になれば、車が順序良く速い速度で走っていく。
 それの繰り返しをひたすらに観察するのみ。
 まるで、それが俺の生活の如く。
 朝起きて、昼間生活して、夜は寝る。これの繰り返し。無駄の多い一日。
「なんだかなー」
 胸ポケットに手を突っ込んで、空っぽだということに気がつく。すぐに手を取り出して、ため息を吐く。
 タバコを家に忘れてきてしまったか。
 財布など持ってきておらず。ズボンのポケットに、電子マネーのカードが一枚入っているだけだ。
 一往復出来るだけの額は入っていて、財布がなければ余計な買い物をしなくて済む。ゲームセンターだって、プレイはせずに、景品や人を見るだけである。
 どうしても、必要であれば電子マネーで払えばいい。少しなら余裕があるからな。
「はぁ……」
 吐く息は白く染まることなく、外に放出された。
 身体から出ていった空気はどこに行くのか。回りまわって、誰かが吸うのか。俺は、誰かの息を吸っているのか。
 人はどこに行くのか。という、疑問に少し似ている思った。
 人がどこに行くのかなんて、興味はない。それでも、生きているのだから。
 なんで、皆はこうして一生懸命生きていけるのだろうか。何か目的があるから生きていけるのか、それは誰も教えてくれない。
 考えるのはやめよう。
 人を見るのすら嫌になりそうだったので、駅の入口の方へと視線を変える……ん?
「ああ……?」
 とんでもないものが立っていた。
 大きな鎌を携えて、"いきゆく"人を、交差点の人々を真っ直ぐに見据える小さな少女。
 背丈は小学生くらい。眼は赤く、薄い栗色。それとすごく長い。頭には意味を成すのかわからない帽子を被っている。
 目を疑った。
 大人だったら、不審者というレベルを超えている。いや、子どもでもあの格好はおかしい。
 だが、人々は彼女に気がつかないのか、避けるようには歩いているが、銀色に光る鎌を見て冷静でいる方がおかしいだろ。もしや、誰にも見えていない?
 そして、
「……」
「……」
 目があった。目があったら勝負の合図……というわけでもなく、どうしようか迷った結果、手を振って見ることにした。
 最初は、彼女が後ろを見たり横を見たりしているが、手を降っている対象が彼女だということに気が付き、赤い眼が見開かれると同時に、こっちにやってくる。
 ……あ、これヤバい? 殺されちゃう?
 なんてこともなく、会話は問題なく出来る距離。狩られても文句の言えない距離。
 でも、彼女は殺意を見せることなどなく、口を開く。
「あなた、わたしのことが見えるの?」
 最初の一声がそれだった。
「お、おう……」
 どう会話をするのか忘れてしまった俺が、ようやく出せた声がこれなんて情けないぜ。
 声が出せたことに俺は自分を褒めたいくらいだ。
 それと同時に、彼女がどことなく悲しそうな顔をしたのは、さてなんでしょう。
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AMaRo Project. 2014