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あの青空に祈りを捧げ
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小説(二次創作)
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ある死神は
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あの青空に祈りを捧げ 第10話


俺が彼女を慰めていると、屋上の鉄製のドアがバンッと音をたてて開かれた。俺と彼女は振り返った。ドアの方向には、白衣の男性が立っていた。

「あ……」

彼女は言った。

「あっ……!」

俺は言った。

「ああっ!」

男性は叫んだ。

「えぇっ!」

俺と男性は同時に互い指をさして、叫んだ。彼女は何がなんだか分らない様子だ。

「優衣。そろそろ、検査の時間だろ? ちょっと、一人で戻っててもらえるか?」

「あ、はい……」

彼女は俺らの事を気にかけながら戻っていった。


「……さてと」

その男性はフェンスに背を向けて寄りかかった。俺もフェンスに寄りかかる。

「おい、知(とも)兄貴。何でここにいるんだよ。いきなりいなくなったっておばさんが心配してたぞ」

何を隠そう、この男性は俺の従兄弟『大谷知博(おおたにともひろ)』である。確か、12歳差だから、知兄貴は29歳か。数年前に突然姿を眩まして、親族中で騒動となった。携帯電話から何まで連絡できるものは何も残さなかったそうだ。そんなのが、こんなところにいるなんてビックリだった。

「……そんな事もあったな」

「そんなことじゃねぇよ」

俺はキレ口調で言った。

「……まぁ、元気そうで何よりだ。ところで、何でお前がこんなところにいるんだ?」

話を切り替えやがった。いつも知兄貴は都合が悪くなるとこうだ。

「話すと長くなるけどな――」

一通り説明してやった。知兄貴はフーンと興味があまり無さそうに答えた。お前が聞いてきたんだろ。

「それで、知兄貴は何でこんなとこにいるんだ?」

「あ、俺? 見ての通り医者になった訳だ。それで数年前に優衣の主治医になったんだな。新米だった俺に主治医をやれだって、なんて上司なんだってお話な訳だな」

知兄貴は苦笑いをしながら、白衣のポケットから赤い箱を出した。棒状のビスケットにチョコがかかったよく見る菓子だった。箱から袋を出して、中身を口にくわえた。

「タバコはダメだからな。これで我慢だ」

そして、口にくわえた菓子を上下に動かしている。

「なぁ、知兄貴。優衣さんの病状はどうなんだ?」

俺が聞くと、知兄貴は上下運動をやめた。

「……お前。どういうことか分ってるよな?」

「わかってる」

「知らないほうがいいって事もあるんだぞ」

「わかってる」

「……そうか、じゃあ、特別に話してやるよ」

知兄貴は菓子を飲み込んで、語り始めた。
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