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あの青空に祈りを捧げ 第19話


「友達ってやっぱりいいですね」

彼女の目からは涙が出ていた。よっぽど面白かったらしく、ずっとクスクスと笑っていた。

「まぁ、そうだね。どんなに『変人』でも友達はいいものです」

あ、俊之が起き上がってきた。

「『変人』ってなんだ。俺はそんなに変なのか?」

「変」

「変です」

即座に俺は答えた。彼女も答えた。俊之の体はピクピクと震えていた。流石に怒らせたか。

「ちょっと、優衣さんまで。酷い。酷すぎる……まぁ、御二人さんの邪魔をすると悪いから帰るな。じゃあね、『優衣さん』」

そう言って俊之は消えた。なんだったんだあいつは。

「……学校って、いいですね」

彼女はボソッと言った。

「なら、その内一緒に行こう」

「え? ……はい。いつか、お願いします」

彼女は一瞬驚いたかのような声を上げた後。すぐに返事をした。俺は決意した。いつか連れて行ってやると。

そうだ、俺はラノベを置いていったんだった。

「そういえばさぁ、小説っぽいものをここにお家来ちゃったんだけどさ、何かなかった?」

俺が聞くと、彼女はハッとして、本を取り出した。まさに俺の愛読書だった。ツンデレ女子高生がニックネームしか明かされていない男子高校生を巻き込んだ『世界を盛り上げる団』とかを作って活動している、あの有名なラノベだ。

「すいません。ちょっと、読ませてもらっちゃいました。颯太さんも読んでるじゃないですか」

微笑みながら、俺にラノベを手渡した。そういえば、『小説は読んでいない』と彼女に嘘ついていたっけ。

「ごめん。ちょっと、言いにくくてさ。面白かった?」

「すごい面白かったです。挿絵もあって、現代っぽいし、文学小説とは違った面白さがあります」

あぁ、彼女を連れて行かないでくれ(別の意味で)。

「そう? もし良かったら、貸そうか?」

って、連れて行っているのは俺か?

「あ、じゃあお言葉に甘えて……といいたいのですが、もう全部読んじゃいました。もしかして、他のこういった小説を持ってたりしますか?」

「持ってますよ。じゃあ、今度来たときに持ってくるよ」

「本当ですか!? すごい楽しみです」

彼女は満点の笑みを浮かべた。そして、俺はこのラノベを鞄に戻した。

「あ、そろそろ帰るね。今日は早く帰らなきゃいけないから」

「はい、わかりました。じゃあ、また今度」

俺は病室を後にした。頼むから、彼女を(別の意味で)連れて行かないでくれ。

――俺は『あの青空に祈りを捧げた』
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