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ある死神は
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あの青空に祈りを捧げ 第6話


俺が帰宅したのは空が真っ黒になってからだった。『ただいま』というと『おかえり』と返ってきた。父は既に帰ってきていた。

「よう、颯太! 今日は遅かったな! もしかして、コレか」

父は小指を立てて、俺に迫ってニヤニヤしている。うざったかったので小指を掴んで軽く逆方向にひねってやった。父は痛そうにしながらも相変わらずニヤニヤしている。

俺の父『多賀 伊知郎(たが いちろう)』は企業で働くどこにでもいそうな酒好きな父親である。強いて言えば声がでかく調子がいい。

「そうだ、今日は気分がいいから、これをやろう」

父……親父は、ズボンのポケットから紙を一枚、俺の目の前から落下させた。ヒラヒラとゆっくりと落下しているもんだから反射的にパッと取る。

「これって……」

確認してみると、紙の左端には『10000』の文字。

「親父! これって、一万円札じゃねぇかよ!」

しかし、時は既に遅く。

「自由に使いな」

親父はそういって、鍵のかかる部屋(通称『親父ルーム』)へ入っていってしまった。


お袋が死んだ時、立ち直りが早かったのは親父だった。

葬式を行って何日もしないうちにもう、仕事をし始めた。俺なんか、学校に復帰するまで一週間はかかったっけな。中学二年の春のことだった――

そして、親父は毎日仕事から帰ってきてはあんな明るく振舞ってはいるが、しばしば部屋にこもってしまう。きっとまだ完全には立ち直っていないのだと思う。ああ見えて、結構深く考えるところがあるからな。


俺は札を財布の中へ入れた。バイトはせず、月に五千円、親父から貰っている。さらに、今日のように親父の気分がいいと臨時収入もある。大抵はラノベや漫画・昼食に消えるのは内緒である。

腹が減ったので着替えてからリビングへ向かった。リビングのテーブルには美味そうな料理が並んでいた。親父は料理が上手い。何処で聞いたのか知らないが、居酒屋のメニューに並んでいるような料理を親父は作る。

俺は親父の作った料理をかきこんで半分を腹の中に収めた。残りは親父の分だ。

満腹になった俺は自分の部屋へ行って、横になった。今日は色々あった。生まれて初めて寝坊して、焦って走ってたら車椅子の座る少女にぶつかり、一緒の本を返しに行って、学校を大幅に遅刻して、彼女の病院へ行って、初めて異性の人と長く話して、仲良くなって……楽しかったけど、疲れた。

俺はこのまま目を閉じて、意識が薄れていった。明日も学校だ。
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