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小説(二次創作)
メルト
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ある死神は
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せくすちぇんじッ! 第10話


   *

「戻った」
 戻ったのである。
 北見少年が家に戻りにくいというので、昨日も利用したファミリーレストランで時間を潰すこと幾時間。
 戻るという確証はなかったが、もしかしたらという願いもあり時間を潰すことにしたのだ。
 生徒会の仕事に関しては、同様に書類を持ち帰ることで参加はしないでおきつつ、やるべきことはやるというスタイルを取った。
 現在は十七時丁度。昨日も変化した時間は十七時丁度であったので、もしやと思ったらこうして戻ってしまったわけである。
「戻りましたね、会長」
 そして、ファミリーレストランの四人席、正面にいるのが北見少年の姿だ。弱々しく、小さくもちゃんと男の体はしている少年の姿がここにあった。
 もう何杯飲んでいるだろうか、二つのコップには氷とストローだけが収まっている。
 そして、世界が戻った。
 ファミリーレストランにいた者全員の性別が真逆になり、元に戻った世界。
 ここまで大きな変化があったのにもかかわらず、周りの人間はやはり何もなかったかのように談笑したり、黙々と食事を食べる者。
 誰も彼も気がついていないようだ。
「やはり、この変化に気がついているのは私たちだけのようだな」
「みたいですね」
 だとすれば、何故私たちだけがこの変化を認知できるのかを考える必要があるのだろうか。
 思い当たる点があるとすれば、私は十七時に男になりたいと願ったことか。
「して、少年」
「はい、なんでしょう?」
 家に戻って、全てが元に持っているのかなど、もっと確認するべき点があるだろうが、人間の記憶なんてあまりアテにならない。それならば、思い出せることは今、聞いてしまいたい。
「少年は昨日、女性になりたいと思わなかったか?」
 単刀直入に聞いてしまおう。
 隠しても仕方ないことだろうし、例え隠していても少年のように純粋であれば、嘘をついていてもすぐに分かってしまうさ。
「ええ、確かに思いましたね」
 少しだけ、気恥ずかしそうに頬を染めるように答える少年。
 女性の姿でも、男性の姿でも守りたくなってしまうような魅力が少年にはあるな。
「何時にだ?」
「え……っと、そういえば僕達の性別が変わる瞬間くらいです。もしかして――」
「ああ、私もそのくらいに男になりたいと思ったよ」
 はっはっは、と二人で同じ事を思っていたのかと考えると笑いが出てしまう。
「して、少年はどうして女性になりたいと思ったんだ?」
 そういう話題になれば、その理由を知りたくなるのは当然でなかろうか?
「えっとですね……」
 おやおや、随分と恥ずかしそうではないか。
 というより、人に言えるようなことでもないからな。確かに、気持ちはわからなくはない。
 自分もあまり人に言いたくはないが、この流れだったわ私も言わねばなるまいな。
 少しだけ顔の赤い少年は、自分の女性になりたい理由を語り始める。
「僕って、見た目の通り頼りないじゃないですか。会長みたいになんだって解決できるわけでもないし、縁の下から支えることしか出来くて、だったら女性になった方が会長のために何かできるんじゃないかと思ったんです」
「なんだ。それだけか」
「ええええええ!?」
 ファミリーレストラン中に少年の声が響く。
 私があっさりと、流してしまったからという原因は認めよう、だからといって、立ち上がって叫ぶことはないじゃないか。
「少年、落ち着くんだ」
「あ、すみません」
 周りの席にペコペコと頭を下げて、着席する少年。
「でも、その程度で片付けようとした会長だって悪いですからね」
「だって、私がなんでも解決できるだって? 私のために男を捨てるだって?」
「ええ、そうです」
 少しだけ機嫌が悪く、語尾は強調されているが、それとともに決意も現れている。
 そうでもなければ、ただの恥ずかしい趣味で終わってしまうからな。
「私はそんなに完璧な人間じゃないよ」
 まずはそれだ。
「確かに、南高校の生徒に害をなす人間がいれば、私は全力でそれを排除しに行く。でも、同時に離れた場所にそういう人間がいればどちらかしか対応することが出来ない」
「どちらかは、対応できるんですか……」
「そんな呆れることではなかろう。それはおいておいて、害をなすものが火事や地震だったら私ではどうしようもない」
「それは……」
「それに、私は男の北見冬樹という少年が気に入ったから、気に入ってるから君は女性になることはないんだよ」
「僕……が?」
「そうだ。そうじゃなかったら、君を生徒会の一員にはしなかったよ」
 少年は暇そうにしていたところを、拉致して無理矢理生徒会のメンバーにしたからな。
 理由は私が気に入ったから。
 でも、今ではれっきとした生徒会の一員だ。
「だから、北見少年が女性になりたいという理由は私から見たらその程度なのだよ」
「……」
「少年は気がついていないけど、私にとってもは大事な人間だよ。きっと、君がいなかったらとっくに変化した世界で発狂していただろう」
「会長に限って?」
「ああ、でも少年がいたからこそ、なんとか平常でいられたんだ」
 北見少年がいたからこそ、今私がこうしていられるのだ。
「で、会長が男性になりたがったの理由は、関係するんですか?」
「ああ。でも、理由としては少年と一緒だ」
「一緒って」
「生徒会の活動が行い易くなると思った。この程度だよ」
 それに気がつかせてくれたのも北見少年だ。
「そして、わかったことが一つだけ」
「それは?」

 ――元の身体がしっくり来るよ。

「まったくですね」
「まったくだ」
 もう、外は夜になりつつある。
 何時間いたか分からないが、そろそろファミリーレストランを後にしようか。
 北見少年もそう感じたようで、二人で同時に席を立つ。
「会長」
「ん、どうした?」
 少年は、ボソリと聞こえるか聞こえないかくらいの声でつぶやく。
「会長にからかわれるのは、そんなに嫌いじゃないですよ」
 と。


「さて、と」
 ファミリーレストランで北見少年と別れ、私は自分のアパートへと帰還した。
 私が男になろうが、女になろうがほとんど変わることのなかったアパートの一室。
 一人で住むには広すぎる灰色の部屋。
 家具や物が少ないから、更に広く見せてしまっているのでないだろうか。
 高校生の一人暮らしを許した両親。部屋を用意してくれたのは父親である。
 この程度の部屋であれば、月の家賃は安いものでは無いだろう。だが、それも父が払っていくれているのである。
 重役だけに金銭感覚が狂っているのもあるだろうが、見栄があるのだろう。
 自分の娘に安いアパートをあてがうことなど、父のプライドが許さぬことなのだろうか。
 私との距離をおいておきながら、自分の地位や印象のためであればこうしていい扱いをする。
 ただただ、私は利用されるだけなのかもしれないな。
 などとソファに座りながら、私が映るだけのテレビをじっとみつめ、そう思った。
 一人暮らしに適した高校というものは結構少ないものだったのは確かで、合格できるボーダーラインより数段低い、この南高校を受験した。
 それを父は反対しなかった。
 とにかくどこかしらの高校を出て、有名な大学に入学することを望んでいるからだろう。自宅から通えるレベルの高い高校より、私がいないほうが都合がいいのかもな。
 全く、不器用な家族だよ。

 ――プルルル。

 などと思っていれば、私の携帯が鳴っている。
 滅多にかかってくることのない電話。発信者には父の名前が、そこにあった。
 なんとも、タイミングがいいことだ。
「……もしもし」
『春香か』
「ああ、私だ」
 初めて聞く人間からすれば、きっと萎縮してしまうだろう威厳のある声。
『ちゃんと、勉強しているか? いい部屋を与えたんだ。出来なかったでは済まされんぞ』
「大丈夫。問題ない」
『……ただ、高校という小さいコミュニティの中でのトップで満足しているようでは、まだまだだ。後を継いで守らないといけないからな』
「耳にタコができそうだ」
『口だけでなく、行動に示せ。ただでさえお前は女なんだ。部下になめられるような人間では話にならないぞ』
「……」
 一方的に、威圧的な会話。
 私はそれを受け流すかのように耳にして、返事を返す。返事をするのではなく、返事を返す。
 そして、言われるがままでもいいと思ったが、この際だ。
「"あなた"は私を会社の重役に置きたいのか、"あなた"の地位のために利用されているのか。どっちだ」
『……父親に、口答えするのか?』
「口答えじゃない。疑問を投げかけているだけだ。答えられないのか?」
『お前のためだ。お前のためでなければ、ここまで面倒は見ない。楽に英才な教育をするのであれば高校など行かせず家に拘束し、家庭教師でも雇っているわ』
 上っ面だけの理由。
『逆に、ここまでしてやっているのに感謝して欲しいくらいだな』
 話の転換。
「もういい。わかった。で、電話をかけてきた理由は?」
『……春香。なにがあった?』
「なにも。いいから理由を」
『ふっ、言うようになったもんだな。もう切るぞ』
「理由は?」
『今月の仕送りを払っておいた』
 そして、電話が本当に切られた。
 私の父。
 会話のドッヂボール。
 ただ、払っておいたと言えばいいのに、わざわざ人を不快にさせるようなことを言うのが父である。
 そして、ささやかながらも褒め、ひと月で生活するには多すぎる金を振り込む父。
 愛されているのか、遊ばれているのか、利用されているだけなのか。
 それは、父にしかわからぬことか。
 父――私が、男になりたいと願うようになった元凶。
 こうしてまでも関係が破綻しないからには、何かしらの信頼関係でも結ばれているのだろうか。
 女だから……か。
 女でも、こうして信頼を得られることくらい、もうわかったよ。
 口端を上げて笑みを浮かべながらも、手で目を覆って天を仰ぐのである。
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AMaRo Project. 2014