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小説(二次創作)
メルト
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ある死神は
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ある死神は 第5話


 ***

 ――そして、背を預けていたフェンスが音をたてて外れてしまった。
「あ……」
 そうか、俺はこれで死ぬのか。
 ゆっくり、ゆっくりと見えるビジョンに、身体が外に投げ出される感覚が身を包む。
 車がたくさん走る地上にたたきつけられて、俺は。
 でも、やることはもうやったんだ。もう悔いはない。
 チラリと見える、彼女の綺麗な顔。
「――ッ!?」
 彼女の苦しそうな顔を見るたびに、思っていた。彼女にその表情をさせたくない。それは、守れそうにないけど、俺は、
「まだ――」
 手を伸ばしていた。誰に助けを求めるでもなく、自然に。
 やっぱり、俺は、生きたいのか。
「    」
 ああ、彼女の声が聞こえる。死神の彼女が、手を伸ばしてフェンスの外れたところから飛び込んできた。
 そうだな、もし、次に目がさめることがあったら、もう一度だけ、夢を追いかけるかな。生きることの大切さを知ったから。
 彼女がどんどん近づいてくる。泣き虫の彼女はやっぱり、光り輝く粒子を目から空へとばらまいて、とても綺麗だ。
「――まだ、生き延びるんだ!」
 彼女の手が、俺の手と触れ合った瞬間。

 ――世界が暗転する。
 


「……………………あれ」
 俺は、死んだのか?
 はっきりしない意識、天井が明るかった。
 横を見れば、青い空が視界に入るし、身体が寝かせられていることを訴えている。
 この清潔感溢れるにおいに、白い部屋といえば。
「病院か」
 なんか、生きてた。
 としか、形容ができない。でも、身体が動かないな。
 なので、足元に視界を映してみれば、左足が包帯でぐるぐる巻きにされて吊られているでは無いか。そして、移るのは彼女の姿。
「あ……」
 目があった瞬間に、彼女は目を見開いて、次の瞬間には笑顔になっていた。
 赤い瞳に、栗色の長い髪の毛。変わった服装をして鎌を持ったその少女。
「目、さめたんだ」
「あ、ああ……」
 両腕は動くし、もう片方の足もそうだ。あの高さから落ちて、一本の足の骨だけで済んだとは到底思えない。
「運が、よかったね」
「へ……?」
 だが、俺の考えはすぐに消されてしまう。てっきり、彼女が助けてくれたのかと思ったが、そうでは無いようだ。
「じゃあ、俺はなんで助かってるんだ?」
「わからない……でも、あなたは生きてたの。本当に不思議な人だね」
 全くだ。俺は、自分の頭の中で考えた決意を実行しないと、いけないみたいだな。
「でも、でもね」
 しかし、次に彼女は再び暗い表情を浮かべる。彼女もまた、色々な事があり混乱しているのだろうか。
「変なの……この病院の人たちのほとんどが、わたしの姿が見えるの。確かにね、もう少しだけだから見える人もいるけど、それでも元気な人でも見えるの」
「ん、それは、どういうことだろう……?」
 確かに、死に近い場所だけど、皆が皆霊感が強いわけでは当然無い。
 彼女の体質が変わっているのであれば、全員見えるはずだ。多分。
「じゃあ――」
 
 ――ガシャン、ドカドカ!!

「な、なんだッ!?」
 突然、たくさんの悲鳴と、色々な物が落ちて壊れる音が部屋の外から響いて耳に入ってきた。
 彼女も不安そうな表情を浮かべる中、部屋は個室なようで他の人はいない。
 どうなってるんだ。悲鳴と、足音が近づいてきて、ドアが勢い良く開け放たれる。
「え、ええ……!?」
 目に入ったのは、真っ赤に染まった看護師さんの姿。なんだ、どうなってるんだ。
「逃げて、逃げてください!」
 床の這いつくばりつつ、ドアに手をかけてるその人は必死に訴えてくるが、俺は一人で動けそうにない。
「でも、俺は……」
「そこのあなた、手伝ってあげて!」
 と、彼女に向かって叫んでいる。この人は、見えてる!?
「わ、わたし……」
 彼女も何が起きているのか、わかっていない。本当に、何が起きていやがるんだ!
 彼女も俺も困惑している間に、ドアにへばりついていた看護師が「あ、ああ……」と外に恐ろしい存在がいるかのように声をあげているし、
「おい、テメェ、逃げてるんじゃねぇ!!」
 挙句の果てに、おぞましい男の声が聞こえた瞬間。看護師が動かなくなってしまった。これって、ええ!?
 更には、その声の主が現れる。
「お、お前は……!?」
 見覚えがあった。それは、彼女と出会った日に、彼女とぶつかったそいつ。
「よう、また会うとは奇遇だな」
 手には赤黒い物体のついた長細い物。かつて、銀色であったであろうもの。
「お前は……そういうことだったのか……」
「ああ? 何を言ってやがる」
 男は俺が何を言っているのかわからない様子だが、視線を彼女に送ると、まるで納得したかの表情出会った。
 確かに、お前は死に近かったよ。そして、なんで彼女が病院で視認されてしまったかの理由もな。
 だがしかし、俺はここからどうすればいい。ここで死ぬんだったら、納得がいくが生憎簡単にやられるつもりは無いんでな。
「オレに出会ったのは不運だったな。ただただ、こうしてナイフを振るうのが楽しみでさ、死神って呼ばれたいんだわ」
「――ッ!?」
 その言葉に、彼女が反応を示した。

 ――死神。

 人を殺すのが死神なんかじゃない。
 それは彼女が、それと俺もよく知っていた。
「だから、お前残念だけど、死んでもらうわ。悪く思うなよ。嬢ちゃんも」
 彼女は鎌を。
 俺は覚悟を。
 男はナイフを。
 それぞれ持ってだな。
「死ねぇ!!」

 俺は――

 彼女は――

 男は――



 その騒動の後の話だがな。
 部屋に戻った俺は、まさかあの死にものぐるいだった数日の"作品"がまさか、夢への一歩になるとは思っても見なかった。
 それと、またイレギュラーな招待状と遭遇することになったが、それはまた、別の話だ。
 あの日、どうなったのかは、俺と彼女との秘密だけどな。
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AMaRo Project. 2014