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小説(二次創作)
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ある死神は
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あの青空に祈りを捧げ 第23話


何だか会話が続かない。相変わらず隣の部屋からは声が聞こえてくる。

俺はその会話に耳を傾けてみた。


『ボク元気だよ。何でまだ部屋から出ちゃダメなの?』

あぁ、叶音の声が聞こえる。駄々をこねる感じの口調だ。やっぱり、俺の苦手なタイプだなありゃ。

『だぁ! うるせぇ! 折角包帯取ってやりに来たのに「もぬけの殻」ときたもんだ。そもそもだな、包帯して目が見えないってのに部屋から出て危ないだろ?」

知兄貴の声も聞こえる。

『病院だから危なくないでしょ? それに隣のお姉ちゃんの部屋に行くだけなんだよ』

いや、その理屈はおかしい。病院でも十分に危ないだろう。例えば……えっと、ボケた爺さんがやってきて知兄貴みたいに拉致ってくとか……まぁ、それはないだろうが(むしろ、あったら俺でもビビるな)

『わかった、俺は帰る。包帯取ってやんねぇ。折角来週から学校に行けるのにな。延期だ延期だ。残念だ』

『わー! 先生帰らないで、取ってから帰ってよ。ボクが悪かった。だから――』

『ちょ、待て! 何処を掴んでんだ、俺の太もも掴んでんじゃねぇよ。やめ……わかったわかった帰らないから離せ――』

まるでコントか何かだな。俺は再びふいてしまった。面白いったらありゃしない。すると、彼女もクスクスと笑っていた。なんだ、彼女も聞いてたのか。

「元気いいな」

「そうだね……叶音ちゃん、早いうちに学校に復帰するって言ってたけど、もう来週なんだ……」

「みたいだな」

彼女は窓の外をしていた。きっと、彼女も学校へ行きたいのだろう……


『おい叶音! 待て! うわぁ!』

隣の部屋から知兄貴の叫び声が聞こえた。と、一瞬かニ瞬か経った時、叶音が彼女の病室に入ってきた。

「じゃじゃ~ん」

誇らしげに効果音を自分でつけていた。叶音の包帯はなくなっていて、綺麗な目が輝いていた。

「かわいいね。叶音ちゃん」

「嬉しいな。お姉ちゃんに褒めたれちゃった」

叶音は嬉しそうにベットに飛び座った。本当元気だな。

「ボク、来週から学校に行くんだ」

嬉しそうに語る。だが……

「悪いが、丸聞こえだったぞ。残念だが俺も優衣も、もう知ってる」

そうだ、丸聞こえだった。

「が~ん」

叶音はまた自分で効果音をつけて、後ろに倒れた。

「けど、うらやましいな」

彼女は微笑んでいた。けれども、裏では寂しそうな口調だった。

「お姉ちゃんも、きっと行けるよ」

叶音が言ったそのときだった。

「くぁぬぉおん!!!」

最早、日本語にすら聞こえないような叫び声で、知兄貴が部屋に入ってきた。なんか、びしょびしょになってところどころ花びらがくっ付いていた。察するに、花瓶の中身をぶっかけられたのだろう。流石叶音だ。
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