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神サマの忘れ物
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あの青空に祈りを捧げ
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突出幼心あくりょうちゃん
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せくすちぇんじッ!
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俺が我が家にやってきまして……。
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小説(二次創作)
メルト
1

ある死神は
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せくすちぇんじッ! 第9話


   *

「あーきーとーくーんー」
 教室の机に突っ伏していると、後方のドアの付近から男子生徒の声がしたので身体を起こす。
 今は既に放課後の時間となっており、教室には俺以外誰もいなくなっている。だからといって、教室には施錠されないので完全に下校しなければいけない時間まではここにいてもいい。
 南部という、俺と同じ境遇にたたされた女子(中身は)と出会い、彼女に放課後暇かという誘いを受けて今に至る。
 生徒がたくさんいる中、二人で並んでというシチュエーションは避けたかったらしい。なので、こうして人が少なくなるのを待って、合流をした。
 余談であるが、南部とメールアドレスを交換しておいた。ピンクの携帯なのには慣れない上に、アドレス帳が見覚えのない名前ばかりで少しだけ頭が痛くなった。
 そして、九久の下の名前は美左というらしい。
「ああ、南部か」
 秋斗の名前を知っているのはそいつしかいない。
 気弱そうな少年の外見であるが、中身が女子なのであまり違和感がないと言ったら怒られそうだ。
「というか、その名前で呼ぶなよ。他の誰かに聞かれてたらどうする」
「別に、他に誰もいないし……本当の名前で呼んだほうがいいでしょ。春香ちゃん」
「……うぐ」
 確かに、その名前で呼ばれると多少なりともダメージがある。
「でも、他の人の前だったら我慢してね」
「ああ、それは仕方ないしな」
 南部は既にカバンを持っていて、学校から出る準備はできているようだ。それに合わせて、俺も机横のカバンをつかむ。
「で、どこに行くつもりなんだ?」
「それなんだけど、わたしの家なんてどう?」
 セリフだけなら何かしらのお誘いなんだろうが、外見を考えてしまうとなんとなくヤバイ匂いすらしてしまう。
「……で、なんでお呼ばれをするんでせうか?」
「だって、どこにいたって居心地悪いし、出来れば安心できるところにいたいじゃない。それに、学校でこんな話なんて絶対できないし」
 確かにそうだよな。こんな会話を聞かれた日には、完全に危険人物だよな。俺の性別は違うんだ! なんて。
「なら、俺の家やカラオケでもいいんじゃないか?」
「あの、ね」
 腕を組むような動作をしてから、ピッと俺に向けて指をさす。
「あの、女の子に気を使わせるの? 二人きりで知らない場所なんて」
「いや、だって……」
 中身は女だし、外身は男だし。
「じゃあ、レディファーストってことであなたに家に行く?」
「……南部様のお家でいいです」
 ファーストなんてされたら、俺の中の何かが死んでしまうような気がした。
「じゃあ、早速行きましょう? どうせ、今残っているのは部活に励んでる人か、暇な人なんだし」
「ああ、そうだなって俺達暇人な訳?」
 部活動か暇人で二分するならそうなる。
「間違いじゃないでしょ?」
「あ、ああ、それはそうだな」
 おい、その外見でウインクするのやめろ。


 徒歩にして約十分。
 俺の家とは逆の方角へと向かった先に南部の家がそこにあった。
 家の位置は変わっていないだろうから、もともとこの場所なのだろう。
「弟……今は、妹か。がいるけど、気にしないでね」
「お、おう」
 ここに着くまでの間、二人で並んで歩く様子はどことなく独特な雰囲気を出していたに違いない。お互いに、距離を開けて歩いていたし会話もなければ視線すら合わせなかった。
 人によっては初々しいカップルとさえ見られていたのではないだろうか。
 それにツッコミを入れてくるような人間に出会わなかったのが救いか。お陰で、真実は闇の中だ。
 して、南部の家は二階建ての一軒家で俺の家と違うのは車庫があること。車が運転できる人間がいるというのは羨ましい限りだ。
「南部は車の免許を取ろうと思ってるのか?」
 だからこそ、聞いてみたくなってしまった。
「んー、そうね。バイクくらいは取りたいかなー。なんで?」
「いや、俺の家には車庫すら無いからさ。免許を取っても、乗る車がないわけで」
「それって、不便じゃないの?」
「まあ、ないものは仕方ないし、諦めてるよ」
「そう。立ち話もいいけど、そろそろ家に入りましょ」
「あ、ああ、そうだな」
 南部はスクールバッグに手を突っ込んで、鍵を取り出し、玄関のドアを開ける。
 半歩、南部が家に入るが、俺はそのまま足を止めてしまう。
「ほら、遠慮しないで」
「そ、そうだな」
「なに硬くなってんのよ」
 確かに、さっきから挙動がおかしくなりつつあるのは認めよう。
「いや、な。状況が状況とはいえ、異性の家に入るのは初めてだからさ」
「わたしも、異性を呼ぶの初めてだけど」
「あ、いやー、初めてをもらっちゃって悪いね」
「……なんかエロい」
 すまん。だから、そんなジトーとした目で見ないでくれ。
「ま、まあ、おじゃまするわ」
「どうぞー」
 一歩入ったら、そこはもう人様のお家だ。
 自分の家とは違う匂いが鼻に入ってくる。
「おじゃまします」
「はいはい」
 一応、礼儀としては言っておかないと。
 にしても、家の中は静かだな。
「家族は今誰もいないから、音立てても大丈夫よ」
「あ、そうなのか」
 てっきり、弟さん――今は妹さんか。がいるものだと。
 ソロソロとしていた挙動に気付かれたようで、そう添えてくれる。誰も居ないのであれば、多少音を出しても問題無さそうだ。
 履きなれない靴を脱いで、揃えようと――
「私がやるわ。ほら、どいて」
「なんで、俺がファーストされてんの?」
「そんなスカート履いて屈まれたら……」
「ああ……」
 意識してなかったが、見えてしまうものなのか? でも、南部が意識してしまうというのならば、別に言及もしないで任せてしまおう。
「さて、わたしの部屋は二階だから。案内するわ」
「おう」
 俺の家とは違う壁紙に、綺麗に整頓された家。これは変化したからこうなのか、元々こうなのか。
 南部を先頭に階段を昇っていく。
「両親は共働きで、弟は部活。ちょうどいい機会なんだよね」
「そうなのか。弟さんは何の所属で?」
「剣道だよ。通ってる中学校が、強豪校らしくてさ、バリバリ鍛えられてるみたい」
 なんとも大変そうなこと。
 ずっと帰宅部だった俺からすると、まぶしすぎるぜ。
 だからといって、頑張ることを馬鹿にしようとは思わないし、もっと頑張ってもらいたいとも思うさ。
 それでも、やめないということは好きなんだろうな。
「頼りになりそうだな」
「そうね。自慢の弟よ……今は、妹になっちゃってるけど」
「なんか、複雑な気分になりそうだな」
「確かに……自分がなっちゃってる以上に、家族が変わっちゃってるほうがショックだわ」
「俺もそうだった……」
 こんな話題をふらなければよかったと、今更後悔しても遅いか。
 階段を上がりきって、一番奥の部屋。そこが南部の部屋のようだ。
「隣は弟の部屋だから、間違ってもはいらないでね」
「そりゃ、な」
 部屋の内装が変わってるだろうし、知り合いの家族の部屋なんて間違っても入れない。
「それと、本当のわたしの部屋じゃ、ないからね」
 ドアノブに手をかけたまま、俺の方に顔を向ける南部。
「わかってる。俺もそうだから」
「……大変ね」
「全くな」
 何故、部屋の中まで変わってしまうかは分からないが、精神衛生上あまりよろしくないのは確かだ。
 この変化に気がついている者だからこその悩みというやつか。
 確かに、南部の部屋は男子っぽい部屋であり、可愛いものは数少なかった。
 学習机に、部屋の真ん中にはテーブルと、囲むようにクッションが置いてある。
 南部はカバンを床に投げてから、机の椅子に腰掛けた。背もたれに顎を乗せて逆に座っている。
「ほら、適当なとこ座って」
「おう」
 確かに、いつまでも立っているのもおかしいからな。
 折角なので、座らせてもらおうか。
 と言いつつも、座れそうな場所はテーブルを囲むように置いてあるクッションくらいか。なので、南部に一番近いクッションを選んだ。
「女の子はそんな座り方しません」
「誰も見てないだろ」
 癖であぐらをかくように座ったら注意されてしまった。しかし、こう座ると見方によっては下着が見えてしまうのか。
「……でも、いいわ。ここからなら、わたしからも見えないだろうし」
 高い位置からなら、どう見ても下着は見えないだろうから、これでいいのか。
「それで、今わたし達に起きている現象のことなんだけど」
「おう」
 異性の家に来て、こんな話をする人間なんて俺達くらいしかいないだろう。というより、こんな現象に巻き込まれてしまっているのが俺達くらいなものか。
 異性の他の誰かの姿になり、それを俺と南部だけが自覚している。
「なんでわたし達だけが、こうして気がついているんだろうね」
「んー、なんでだろうな」
 何故か、と聞かれると答えられない。
 どうして、こんな状況になってしまったのかというのは、この世界を見渡せるような奴にしかわからまい。
 ただ、思い当たるフシはあるっちゃある。
「……そういえば」
「どうしたの? 何かわかった?」
「あ、いや、な」
 イカニモな奴らに絡まれたことを思い出した。
 校門で絡まれて、裏山の公園まで逃げて、女になりたいと思った。
 それを思い出せる限り、南部に伝える。あまり良い記憶でないので、喋りたくはなかったが仕方あるまい。
「ご愁傷様ね」
「まったくだ」
「でも、ね」
 背もたれに乗せていた顎を上げて、その顎に手を当てる。
「あなたは『女の子になりたい』と思った瞬間に、自分の身体が女の子になっていたんだよね」
「ああ、そうだな」
 あの時は、本当にそう思った。思ったが、ずっと女でいたいとは望んでいなかった。確かに、羨ましいと思ったことはあったがな。
「で、南部はどうなんだよ。まさか、男になりたいとでも思ったのか?」
「うぐ……」
 なんか、詰まったような声が南部から漏れる。
「なんだよ。俺と一緒かよ」
「一緒にかわいそうにしないでよ!」
 かわいそうなのが嫌なのかよ。
「確かに、男になりたいと思ったのは否定は出来ないし、出来ないけど……」
「けど?」
「い、いいじゃない。理由なんて」
 一度、言葉を止めて、南部は深呼吸をはじめる。なんだかんだ、せわしないな。
「とにかく! わたしもあなたも十七時に異性になりたいと思った。それで間違い無いわね!」
「あ、ああ、そうだから、ちょっと落ち着けって」
 しまいには立ち上がって、俺に向かって指をさして釘を打ってくる。そんなに隠したいような理由なのか!?
「ごめんごめん。ちょっと熱くなりすぎちゃったわ」
「わかってくれればいいよ」
「で、さ」
「なんだよ」
 これが青春と呼ぶのであれば、あなたの目は節穴であろう。
 異性と話してさえいれば、青春なんてそれは甘い考えであろう。
 青春であれば、こんな会話なんてしないし、もっと楽しい話題であるはずだ。
「あなたって、黒髪で長いのが好きだったりするの?」
「何をやぶから棒に……ああ、確かに俺は好きだが」
「あと、その……胸は大きい方が好きなの?」
「……おまえ、実はむっつりなのか?」
「違うわよッ!!」
 キレられてしまった。
 ちなみに、俺はそこまで大きいのは好きじゃないぞ! だからといって、小さいのも好きではない。
「でね、わたしの予想なんだけどね」
 と、言いながら俺の身体をまじまじと見てくる。確かに、黒髪で長くて、胸が大きい気がするけど、それと何か関係があるのだろうか。そして、南部が口を開く。

 ――なりたいと思った、異性の姿になってるんじゃないかしら。

「あ、あー」
 それは否定出来ないし、あってるかもしれない。
 俺は黒髪が好きだ。長い髪が好きだ。胸は……………………嫌いではない。
 で、あれば俺は自分自身が求める理想の異性像だというのか? ならば。
「じゃあ、南部はそんな男が好きなのか」
「ま、まあ、そうね。そんなにガチガチよりかは好きね」
 ガチガチ? そいえば、最近そんな人間に遭遇したような。
「あ……」
「どうしたの? そんな、世界の終わりみたいな顔して。確かに、終わってもいいくらいの世界になっちゃったけどさ」
「ああー」
 両親か。
 父親が筋肉達磨で、母親が幼女……ということは。
「俺の両親にそんな趣味が……」
「あ、うん……人には言えない趣味があるものよ」
 座ったまま慰めてくれる。せめて、手くらい貸して欲しいと思ってしまうくらいに、衝撃が大きい。
 そうか、そんな趣味が……できれば、一生知りたくなかった情報だよ。
「あ、そうだ」
 と、落胆する俺を横に、南部は何かに気がついたかのようにつぶやく。
「急にどうした?」
「あのね、十七時丁度に『異性になりたい』って思ったんだよね」
「だな」
「もしかしたら、時間が大事なのかなって思ったんだけど……違うかな」
「俺と南部が十七時に『異性になりたい』と思ったから、世界が変わってしまったと」
「そうなると、スケールが大きすぎるからないかな」
 同時に同じ事を想像することなんて、この広い世界だ。二人くらいであれば、日常茶飯事の事なのではないだろうか。まあ、人の思考なんて分かるわけもなく、推測の領域でしかないが。
「まあ、どちらにせよ。今は神のみぞ知るとしか言えないがな」
「全くね……」
「少なからず、今この状況を受け入れるしかないのか……ん」
「ん?」
 そいえば、南部と初めて遭遇した時に行きそびれてたっけ。あの時はそれが目的ではなかったが。
 股の間のこの感覚。男の時とは少し違うが、これは……。
「すまん。トイレ貸してもらえるか?」
「ああ、いいわよ。というより、ダメとは言えないし」
 と、南部が立ち上がろうとした瞬間、
「あ……わッ!!」
「え……おわッ!?」
 椅子のバランスが崩れ、南部を乗せたまま後輪が浮き上がってしまったではないか。南部自身も浮き上がり、このままでは――。
 しかも、俺だってあまり激しく動けないし、これはまずい!
 南部が、一気に俺の方へ、椅子ごと、

 ――ふわり。

 身体の浮き上がる様な感覚とともに、
「きゃああああああッ!!」
 甲高い声を上げながら、南部が突っ込んできた!
 椅子は違うところに吹っ飛んでいき、俺は思わず腕を前に出す。南部を守るというより、自分自身がヤバいからだ。
 両腕が南部の身体をキャッチし、強い衝撃が腕を伝わる。
「おい、大丈……なッ!?」
「わたしはへい……ええ!?」
 あろうことか、俺の目の前には少女の顔がそこにはあって、もう数センチも近づけば唇がくっついていしまいしょうな距離だ!
 吐息なんて、お互いに伝わってしまっているし、なんか顔がほてるような感覚すらする。
 肩にかかるくらいの髪をして、前髪にはヘアピンが付けられている。それと、俺の手には随分と柔らかい感触が……って、
「あ……」
「……」
 衝撃がなんとなく少し和らいでるなと思ったら、俺より貧相そうな胸を鷲掴み……おい待て。南部は男の姿だったのに、なんで胸があるんだよ。しかも、髪の毛まで伸びて、劇的なビフォーとアフターか? 俺の声は男の声に戻っていて、胸元は軽い。これは、これはッ!?
「秋斗くん。そろそろ、離してもらえるかしら?」
「あ、はい!! ……って、南部が起き上がらないことには俺も動けないんだが」
「なに? わたしそんなに重かったかしら?」
 あの、顔が笑ってないんですが。笑顔なのに。
「仕方ないわね。起き上がって、あ・げ・る」
「うがががががが」
 俺の肩をつかむな。それ、痛い! 俺の肩を両手で掴まないでッ!!
 なんてこともあり、なんとか二人はこんがらがった状態から戻ったわけで。
「急に戻るとは思わなかったな」
「まったくね」
 お互いに元の姿に戻っている。俺は詰襟とズボンの制服に戻り、南部はブレザーにスカート。
 部屋もピンクっぽく、女子らしい部屋にと戻っていた。家具の配置自体は変わっていないが、クッションもどことなく可愛らしい。
「……」
 なんて部屋を観察してると、南部は俺の顔をまじまじと見つめ始めた。
「なんだよ。顔になんかついてるのか?」
「いや、どこかで見たことある顔だなーって」
「た、確かに、俺もあるぞ」
 言われれば確かに、初めて見る顔ではない。だからといって、どこかで仲良くなったというわけではない。
 少し長い髪に、ヘアピン、退屈そうにモップを持っていたような……
「「あ……ああああああ!!」」
 二人は同時に指を差し合う。
「あなた、あの時のナンパ男!」
「ナンパじゃねーよ!!」
 入学式の片付け一人で立ってた女子生徒じゃないか!
「「……」」
 あの時の印象は最悪であったが、今はどうだ? 二回も初対面のチャンスがあり、二回目は好印象でこうして、南部の家に招いてもらっているのである。
「まあ、いいわ。あなたが、どういう人かなんとなくわかったから」
「ああ、水に流してもらえると助かる」
 南部夏弥。
 一田曰く、孤立してしまった少女、か。
「……で、なんでわたしに話をかけたのかしら」
「お前が男子のナリをして、女子トイレに――」
「じゃなくて、片付けの時よ」
「あ、ああ……」
 あの時は一人で孤立しているように見えたから。他の女子生徒は群れを作っていたのに、南部だけが一人だったから。
「南部が一人だったから?」
「なるほど」
 だからといって、怒りもせず悲しみもしない返答が返ってきた。
「確かに、わたしは一人よ? 友達もいないし、加わるグループもない。だからどうしたの?」
「周りを見てたら、珍しいなと思ったからさ」
「それで、秋斗くんはどうしようとしたの? もし、わたしがあんな対応をしなかったら」
 女の子座りで、俺の双眸をじっと見つめる南部。
 その目には何かの想いが詰まっているようで。希望か、それとも別の何かか。
 俺は、話しかけて何をするつもりだったんだ?
 友達になろうでもない。仲良くしようでもない。当然、ナンパでもない。
「……わからん、でもな」
「でも?」
 一田は言っていた。孤立した女子生徒は標的になりやすいと。
「一人でいるやつを放ってはおけなかった。だから、お前に友人の一人でもいるようだったら、俺の興味はそれで終わりだった」
 しかし、南部は今言った。友人がいないと。
「でも、お前に友人がいないと知った今。興味は終わらない。それに、一人にしておけない」
「……だから何よ。あなたは女の子になってくれるの?」
 南部がうつむいて、口ごもるように言葉を紡ぐ。
「あなたは、男子でしかない。そんな人と友達になったところで、周りからはカップルになったともてはやされるだけ、出る杭は打たれるようにわたしは打たれてしまう」
「お前はそんなんで凹むタマかよ」
「タマって……」
 あ、なんか呆れられた。
「一度でも、お前は男になったんだ。タマはあっただろ」
「……変態」
「お前だって、見たんだろ? 俺と同じくお前も変態さ。それよりも、だ。南部は『男と男の友情』っていたんだ。それはまだ有効だろ?」
「それは……あの時だったから……」
「じゃあ、女と女の友情か? どっちでもいいよ。何が言いたいかって――」
 
 ――俺と友達になってくれよ。

 ということだよ。
「……後悔しても知らないからね」
「ああ、お前のためなら体だって張ってやるさ……友達としてだけど」
 危うく、友人を飛び越える発言をするところだったぞ!?
「ふ、ふふふ」
「ははは」
 ただ、それだけ。
 もしかしたら、悩みなんてものは、自分から見たら大きいものだけど、他の人間からしたら小さいものなのかな。
 ガチャ。
「ん、ガチャ?」
「ガチャって……まさか!?」
 南部が真っ青な顔をして、ドアの方を向いた。それにならって、俺もそちらに視線を向ければ、
「……」
 見知らぬ少年がそこにいるではないか!
「ね、ねーちゃんが、男を連れてる……」
 もしや、南部の弟か!!
「あ、これは、ちょ……なんで、もう帰ってきてるのよ!」
「ご、ごゆっく――」
「待ちなさい!!」
 脱兎のごとく、弟さんが逃げ出し、南部が追いかける。
 なんだかんだ言って、面白いやつじゃんよ。
 本当に、友人になれるんじゃないか。そういう気がするよ。

 ……それと、足の痛みに気がつくのはその後すぐ、疲れきった南部が帰ってきてからのことであった。
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AMaRo Project. 2014