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ある死神は
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あの青空に祈りを捧げ 第8話


俺は彼女の病室の前に立っていた。廊下には病院で働いていると思われる人や入院をしていると思われる人が俺の事をチラッと見て通過していく。やっぱり、まだ気が引ける。勇気を出せ、俺。

「早く、ノックしちまえよ」

男の人の声が聞こえ俺は前に押し出された。ドアにぶつかりドンと鈍い音を立てた。すぐ振り向いたが、それなりの人の数だったので、特定できなかった。そして、部屋の中から「はい」とちょっと驚いた声が聞こえた。声の主は彼女だ。

俺はドアを開けて中に入り、ゆっくり閉めた。俺と彼女の目が合い、お互いに笑顔を交わした。丸椅子を持ってきて、彼女の前に置いた。その後、荷物を置いて椅子に座った。窓の外は青空が広がっていた。

「また、来ちゃいました」

「はい」

お互いにちょっと笑い声をもらしながら微笑みあった。そして、沈黙。

少し時間が経った後、彼女は「ふぅ」と息をしてから口を開いた。

「今日は、屋上に行きませんか?」

「いいですね。じゃあ俺、車椅子借りてきます」

俺が立ち上がったとき彼女は「待って」と俺を引き止めました。

「これくらいの距離なら、自分の足で大丈夫です」

そういって、彼女はゆっくりとベットから降りた。俺は無意識のうちに手を差し伸べて、支えた。白くて小さな手だった。強く握ったら壊れてしまいそうだ。

「じゃあ、行きましょうか」

「そうですね」

俺は彼女から手を離してドアを開ける。廊下では二人横に揃って歩いているが距離が少し遠かった。やはり、お互いに意識をしてしまう。

廊下を通り過ぎて、階段に差し掛かった。階段の横にはエレベーターがある。

「屋上はこの上です。エレベーターは無いのでこの階段を使うしかないのですけど」

そうして、俺と彼女は階段を登り始めた。彼女は手すりを使って一段一段。俺は中心よりちょっと左側を歩いていた。パタンパタンという彼女のスリッパの音と、コツコツと革靴の音が共鳴して階段に鳴り響く。

「あっ……」

彼女がバランスを崩した。よろけて手が手すりから離れた。危ない!

俺はすかさず、左手を彼女の背中に、右手を彼女の左手を手すりに戻した。

「大丈夫?」

「はい、ありがとうございます」

俺は彼女の体勢を戻して、左手で彼女の右手をやさしくつかむ。やっと、俺は安堵する。

「間に合ってよかった。もし間に合わなかったら――」

「けど実際、颯太さんが助けてくれた。それでいいじゃないですか。『もし』なんて、考えないでください」

初めて、彼女に怒られた。ちょっと強い口調だっただけかもしれないけど、俺は深く反省した。

「そうだね」

そして、屋上のドアの前まで着いた。俺はドアを開けた。ちょっと重かったけど、すんなり開いた。吹き込んでくる風が気持ちよかった。

「やっと、着いたね」

「そうですね」

――気がつけば、俺は彼女に向かって敬語は使っていなかった。少しずつ、溶けていく。お互いの『氷』が『溶』けていく。
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AMaRo Project. 2014