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ある死神は
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あの青空に祈りを捧げ 第30話

・協力者 前編

*

「颯太。ちょっと待ってろ」

知兄貴は俺を診察室の椅子に座らせると、部屋の奥へ消えた。顔を下に向けそのまま暫く待っていた。その間、特に何も考えていなかった。

「おい、颯太」

呼ばれてやっと気がついた。顔を上げると知兄貴の右側に白衣を着た女性が立っていた。きっと、ここで働いている人だろう。

「彼女は俺の大学からの友人で『新井 真紀(あらい まき)』だ。俺が優衣に外出を許可している事を知っている数少ない人間だ。ついでに言うと英検・数検・漢検は全て1級、さらに空手1段、将棋2段を持つとりあえずすごい奴だ」

知兄貴は新井さんの肩を軽く叩いた。新井さんは一歩前に出た。更に知兄貴の左足を踏んづけていた。とても痛そうだ。

「改めて、私は『新井 真紀』。颯太君のことは聞いてるんだけど……」

新井さんは途中で言葉を止めて知兄貴の事を見た。

「何で、知博の従兄弟さんに自己紹介してるの?」

確かに俺も気になった。何で俺に知兄貴の友人を紹介されたんだ?

「それは、一応仲間がたくさんいたほうが心強いだろ? それより、足をどけてくれないか?」

「やだ」

そう言って、新井さんは足をぐりぐりと回転をさせ始めた。

「痛っ。痛たたた。悪かった。俺が悪かった」

……ここで、喧嘩をするのもいかがなものと思われるが。とりあえず、すご~い仲がいいということはわかった。

「それより、私。もうあがりだから早く帰りたいんだけど? もういい?」

「いいから、もういいから、足をどけてくれ」

「覚えてなさいよ」

そう言って、新井さんは知兄貴の左足を踏んでいた足をどかして、診察室の奥へ向かった。

「あ、そうだ」

けれど、突然足を止めて振り返った。

「颯太君。もしよかったら乗ってく?」

新井さんは車の鍵を手でブラブラさせていた。

「いいんですか?」

思いも寄らなかった。バスを待っているよりも断然早く家に着く。

「是非乗っていってよ。私の趣味だから」

「ありがとうございます」

「まぁ、裏の駐車場で待っててよ。すぐに行くから」

「はい」

新井さんは、今度こそ診察室の奥へ消えた。俺も行くとしますか。俺は立ち上がってドアへ向かった。

「おい、待て」

ドアを開けようとした瞬間。知兄貴に呼び止められた。

「何だよ」

「お前――」

この先は内緒だ。どんな会話を繰り広げたかは今は秘密にしておきたい。
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