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ある死神は
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祭囃子~記憶の隅に~ 第3話


*

何時だったっけか、俺が小学生低学年の時だったか。

この出来たばかりの神社は小学生にとっていい広場だった。

俺や友達は集まって広場でサッカーをしていた。真新しい二匹の狛犬の前で。

「おい、ゆうき! いくぞ~」

「おう」

俺は味方からボールを受け取ろうとした。

「あっ!」

しかし、そいつは力を入れすぎてしまいボールが森の中へ入っていってしまった。

「おれが、いってくる」

一番森に近かった俺は、すかさず森の中へ入った。

ボールは微妙な斜面の森の道を転がっていた。少しずつ加速していくボールに俺はついていくのがやっとだった。

進んでいくと、ボールがパッと消えた。しかし、ボールに夢中だった俺はそのままついていってしまった。そこは大人でさえ転がっていってしまうほどの急な坂道だったのに。

「あっ!」

俺は坂道を踏んだ時もちろんバランスを崩した。このままでは、ふもとまで転がっていってしまう。俺はそのときも目を閉じた。そして……

「ゆうき!」

少女の声がして、誰かが俺の腕が掴まれて、俺の腕を思いっきり引っ張られて、俺は森に連れ戻された。ボールはその後、神社の外で回収をした。

そういえば、友達が揃いに揃って変な事を言ってたな。

俺がボールを探しに行っている間、神社の狛犬の口を閉じている方がいきなり光りだして、消えたとか。そして、俺が戻ってきたときには狛犬も戻っていたと。狛犬が消失していた間はいなかった俺は当然信じなかった。けど、今なら信じられる。

*

祐樹が目を開けると、まつりがいた。手を掴んで、荒く息をしていた。まつりが倒れていたところから祐樹のところまで、結構距離があってまるで瞬間移動をしたかのようだった。祐樹はハッとした。

「全部繋がった。君は――」

祐樹が言いかけたとき、会場から放送が聞こえてきた。

『本日の祭りはこれをもちまして、お開きとなります』

「ごめん、私、そろそろ行かなきゃ……今日は、楽しかったよ。ありがとう」

放送と同時にまつりは、祐樹の頬にキスをして走って立ち去った。祐樹の前からいなくなった。祐樹は暫くそのまま立ち尽くしてた。




『おい、兄弟。目を覚ませ。とっくに祭りは終わっちまったぞ』

ウエストポーチの言葉で我に帰った。どれだけの時が経ったのだろうか、提灯の明かりは消えていて、森が真っ暗になっていた。祐樹は黙って何度も何度もウエストポーチを殴った。

『痛い、痛い! 何をする兄だ……』

ウエストポーチに水滴が当たった。それは祐樹の涙だった。気がついて、ウエストポーチは小さくため息をついてそのまま殴られ続けた。

暫くして祐樹は手を止めると、携帯電話を懐中電灯代わりにして、走り出した。その先は、もちろん――


祐樹は本堂にたどり着いた。もう、祭りが終わってしまい、人っ子一人いなくなっていた。

そして、狛犬の口を閉じている方の前に立って、携帯電話で照らしてみた。

狛犬の左前足には赤色のブレスレット。口にはチョコレート。まだ水分を含んだ土で体全体が若干汚れていた。

「やっぱり、君だったんだ……」

そういって、狛犬に触れた。

『祐樹……』

その狛犬はあの浴衣少女の声で祐樹の名前を呼んだ。

「気が付くのが遅くなってごめん」

携帯電話のバッテリーが切れ二人は月と星の明かりに照らされていた。
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AMaRo Project. 2014