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小説(二次創作)
メルト
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ある死神は
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即興小説トレーニング置き場 第2話


・冬のひまわり
制限時間:30分 お題:明るい土 未完

「ふわ……流石に夜になると寒いな」

 息を吐くたびに、白い息が立ち上って空の闇に消えていく。
 コートを着込んで、ポケットに手を突っ込んでいるのに、かじかんでくる。
 もう少し、暖かい格好をしてくればいいなと思ったが、もう戻っている時間はない。

「アイツはまだかよ」

 今、俺が立っている場所といえば、固く閉ざされた学校の校門。
 そこで、友人である"彼女"の到着を待っていた。
 彼女が来ることはおろか、通行人も誰一人通らない。
 学校にも誰も残っていないようで、真っ暗になっている。
 ここで警備員や、警察の人が現れないことを願いながらも、ただただ震えて待ちぼうけている。

「うおーい!!」

 などと、思っていると少しだけ遠くから大きな声が俺の耳まで届いてきた。
 あのバカ、目立つようなことをしてんじゃねーよ。
 手を振って、モコモコのコートにマフラーと完全防備をして小走りでようやくここまでたどり着く。
「おい、大きな声出すなよ」
「ごめんね、えへへ」

 謝罪の言葉をしながらも、その表情はどこか嬉しそうである。
 ただの友人でそれ以上の関係でもない"彼女"。
 その彼女から、こんなことを提案されてしまったのである。

「夜の学校に侵入しようだなんて、なんでいきなり……」
「だって、一度はやってみたいじゃん。それに、もう何ヶ月もしないうちに卒業なんだよ」
「あ、ああ、そうだな」

 そう、もう暖かくなったら俺たちはこの学校から、旅立たなければならない。
 俺も、彼女も別の道に進んでしまう。
 他の友人も、もう勉強をしているし、遊んでいる暇は無いはずである。
 俺? 聞くなよ。

「ということで、見回りの人間が来る前にさっさと入っちゃおうぜ」
「うん!」

 侵入すること自体は簡単だった。
 ただ、カメラがギラリと睨んでいたので、後日問題になるかもしれないが。
 でも、彼女の願いだからこそ、きいてしまった。どうして、彼女だからきいたのかは俺でも分からない。

「さて、俺たち二人で校庭を独占しているわけだが。何をしたい?」
「うんとね」

 広い広い校庭。俺たち二人では広すぎる。
 それでも、やりたいことはいくらでも出来る。
 校庭の端っこには薄ら、片付け忘れられた用具が光を反射している。

「冬だけど、ひまわりが見たい!」
「冬なのに夏の花かよ」
「うん、もう君とは見れないかもだから……」
「おう」

 もう、彼女とは夏を過ごすことはできない。
 だから、できる限りのことはしたい。

「じゃあ、手伝え」
「え、え……?」

 冬にひまわりを見せるにはどうするか。
 答えはいくつかあるだろうが、俺の出した答えは――。


 数時間後。
 明るくなった学校には、たくさんの生徒が学校に到着していた。
 そんななか、俺たちはというと。

「あまり綺麗に描けなかったね」
「しょうがないだろ、プロじゃないんだから……」

 屋上で、あかるなった校庭をみおろしていた。
 絵に描いたひまわり。これならば冬でも、見ることはできる。

「でも、楽しかった」
「ああ、そうだな」

――時間切れ――

 たくさんの生徒たちが立ち止まって見てゆく不恰好なひまわり。
 それでも、俺たちの思い出にするには充分すぎるものだった。

「ねえ、知ってる?」
「何がだ?」
「後四年、一緒にいられるってこと」
「……え?」

 それって、もしかして。

「だから、もっと思い出を作ろう? 高校じゃ、できなかったこともたくさんしよう?」
「……結論を」
「好きだよ」

 俺はそれに答えることはできなかった。
 ただ、顔が火照って赤くなる間隔とともに、

 ――そっと、彼女を抱きしめた。


 余談だが、防犯カメラにはバッチリ写っていて、仲良く呼び出しを食らったのもまた、二人の思い出である。
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AMaRo Project. 2014