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ある死神は
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あの青空に祈りを捧げ 第31話


という訳で、俺は新井さんの車に乗せてもらっている。車の知識は無いに等しいが、ボディーは白で小さめの一般的なものだ。運転は丁寧で法定速度はきちんと守られている。

「そういえばさぁ、知博ってちょっと変わってるよね」

運転席から後部座席に座っている俺に話しかける。

「そうですよね。本人がいる前では決して言えないのですがね」

呆れたような笑いを浮かべながら俺は答えた。

「いい例としては、優衣ちゃんの無断外出。大きな賭けだよね。『こうなったのには自分に責任がある。だから――』ってね。けどさ、ばれたらまずクビでしょ? 私だったら、無理だな……あ、ここ右だっけ?」

「は、はい右です……そうですよね。俺もその立場だったら無理ですね」

車は右に曲がった。遠心力を感じながら俺はつくづく思った。

『知兄貴にとって優衣は大切な人』

だということ。無論、恋愛的な意味ではなく、なんと言うか先生と生徒や兄と妹みたいな関係の意味だ。

「だから、知博には魅力があるんだよね」

新井さんは少し微笑んで少し顔を赤らめていた。なるほどね。

「新井さんって、知兄貴の事が――」

突然俺は前にすっ飛び助手席に頭をぶつけた。急ブレーキを掛けたようだ。

「ちょっと、冗談よしてよ。誰があんな奴……」

とかいいつつ、新井さんの顔は真っ赤になっていた。なりほどね。だから、知兄貴の協力をね。

その時、車が止まる感じがした。外を見ると、俺の家の前だった。

「ここだよね? 表札に『多賀』ってあるし」

「あ、はい。でも、ちょっとお話をいいですか?」

「ん? 別に構わないけど」

「実は――」

知兄貴と同じ事を話した。新井さんは快くオーケーをしてくれた。ありがとうございます。彼女がこの事を知ったらどういう顔をするのかな。

俺は新井さんに何度もお礼を言って車を降り、家のドアを開けた。

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