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せくすちぇんじッ! 第12話


   *

「会長。またここなんですか?」
「そうだが、何か不都合でもあるか?」
「そうじゃないんですが……」
 今日も懲りずに私と北見少年は昨日、一昨日と利用したファミリーレストランを利用していた。
 いい加減サボって二人でデートをしているなどという噂が立ってしまいそうだが、仕事はきちんとこなしているし、北見少年とは生徒会としての打ち合わせという事で言い訳くらいは準備している。
 それよりも、ここにいればあまり動かないで済むので楽である。
 そして、現時刻は十七時前。
 昨日や一昨日のことを考えれば、今日もまた何かが起こるに違いないと思った。
 だから、その変化を認知している北見少年といたほうがいいだろうと考えたからだ。
 何も発生しなくとも、ただの思い過ごしで済ませることができる。
 まだ席についたばかりなので、四人席の卓上にはメニューだけが置かれている。まあ、注文するものはすでに決まっているのだが。
 私の対面には気弱そうな少年、北見少年がそこにいる。
 混み具合は半分ほど埋まっているが、客の来る頻度も多くない程度か。
「それにな、もう一つ」
「はい?」
 私はある店員に向かって指をさす。
 指の先には一人の背の低い少女がウェイトレスの服を着て、せわしなく動いている。
 彼女に接客してもらった者は、もれなく微笑ましそうな顔をしている。
 小学生のような容姿をしているが、れっきとした我が校の生徒の一人である。
 今はトレーの上に水の入ったグラスをいくつか持って、渡そうとしていることろである。
「はわわ、お水をお持ちしました……あわわ、ご注文でしょうか?」
 トレーの上の水をひっくり返しそうになりながら、オーダーを受ける小型の機械を取り出している。見かねた客が、自分で水を取って申し訳なさそうにされる始末である。
「あの方ですか……以前に会長ときた時に水をかけられたこともありますよね」
「そんなこともあったな。ははは」
 あの時もあんな感じに、機械を取り出そうとしてグラスがひっくり返ったのだよ。
「会長はうまくコップを受け止めたので被害はありませんでしたが、僕はびしょ濡れになりましたよね」
「ははは、あの時は申し訳なかったな。しかし、自分と両方を同時にとっさに守るということは流石にまだ出来ないからな」
「まだって、できるようにするつもりですか……」
「生徒会長だからな。自分も生徒も一緒に守れないでどうする!」
 バンッ、と私が机に手を叩きつけている間にも、彼女は右往左往と忙しそうにしている。ニアミスしている場面も少なくない。
 そして、
「はわぁ!!」
「「あ……」」
 ついにコケた。店にいた客の全員が「ついにやってしまったか……」と言いたげな一文字を口にする。
 手に持っていたトレーは奇跡的に何も乗っておらず、拍子に吹っ飛んでいったのがバックヤードの方だった。
 勢いがついてコケたのか、凄まじい速度でトレーが飛んでいき、
「ぎゃああああああ!!」
 奥のほうから男性の悲鳴が店中に響く。ついに犠牲者が出てしまったか……。
 彼女は恥ずかしそうに立ち上がり、店内の客に一礼してからバックヤードに走っていった。
「……あれでよくクビになりませんね」
「一生懸命な人間を簡単には切れないさ。それに、彼女目当てでこの店に来る客も多いらしいぞ? ははは」
「世界は広いですね」
「いや、世界は狭いぞ?」
 私もその一人だったりするからな。
「あわわわわわ、ごめんなさいです!!」
 彼女の謝る声が店中にも届く。客は怒るどころかどこか満足気ですらある。
「さて、と。注文はドリンクバーでいいか?」
「ええ……で、彼女に注文するんですか?」
「そりゃそうだろう。他に誰がいる」
 警戒心に満ち溢れた嫌そうな表情を浮かべる少年を見据えつつ、ドーム状の白いスイッチを押す。
 少年はどうしてここまで彼女を嫌がるのだろうか。まあ、確かに以前水をかけられているのだから、仕方ないといえば仕方ないか。
 店内ではピンポーンという玄関チャイムのような音が響き、
「ふわぁい!!」
 ウェイトレスの彼女がバックヤードから飛び出して、こちらのテーブルまでやってくる。
 手には水の入ったグラスが二つ乗ったトレーも運んでいる。
「いらっしゃいませ。お冷です」
 ずっとここで働いているはずなのに、その手は覚束ず、プルプルと震えてすらいる。
 少年はメニューでいつでも対応できるようにしている。だが、その心配も無用でグラスを二つ無事並べ終える。
「ああ、ありがとう」
「それでは、ご注文を受けたままります」
 あ、噛んだ。
「ドリンクバーを二つだ」
「かしこまりました。コップはドリンクバーに置いてありますので、そこからお取りください」
「うむ、わかった」
 覚束なくとも、やはりプロだな。ついでに、時刻は十七時直前である。
 彼女が立ち去ってから、北見少年が立ち上がり、
「会長、何が飲みたいですか?」
 いつも、少年は私の分までとってきてくれる。気遣いができるのが少年だ。
「じゃあ、乳酸菌飲料を頼む」
「わかりました。いつも飲んでますよね」
「好きだからな。でも、あれって乳酸菌は全部殺してるから、大して腹に優しいわけではないんだぞ」
「……」
 あれ、なんだろうこの空気は。
「行ってきますね」
「ああ、頼むよ」
 少年はドリンクバーへと向かっていった。
 ここの乳酸菌飲料の銘柄はなんだっけか。なんでもいいか。
 スカートのポケットから携帯を取り出して、ディスプレイを見る。後、二分ほどか。
 ここは店の入口に近い壁際の席であり、店の中が一望できる。
 きょろきょろと見渡していると、挙動不審なので眼球を動かすだけで我慢する。
「会長、お待たせしました」
「ああ、ありがとう」
 なんてことをしていれば少年がドリンクバーから帰還し、私の前のコップを置いてくれる。白い液体の入ったグラスには、氷とストローも一緒になっている。
 少年のコップには緑色の液体がシュワシュワとしている。
「少年」
「はい?」
 席につく少年にすぐ声をかける。そろそろ時間か。
「もうすぐ十七時だぞ」
「え……って、もしかして」
 刹那、

 ――身体が浮き上がるような感覚が流れる。

 昨日ぶりの感覚であるとともに、この"ツイてる"感じ。
 正面にいるのは少年ではなく、少女の姿。
「……あの、会長?」
 少し涙目でこちらの双眸を見つめてくる。
「やはり……だな」
 できれば外れて欲しかったこの予想。
「やはり、十七時になるごとに変化している」
 北見少年は南部夏弥という少女の姿に。私は東條秋斗の姿へと変わっていた。
 ついでにこの店にいる客全員の性別が、そっくり入れ替わっている。
「戻ったと思ったのにやっぱり、こうなるんですか……」
 うなだれる少年に私は、笑って答える。
「明日になれば元に戻るぞ。変わるのは人間だけで、授業や行動したことはそのまま残る。それでいいじゃないか」
「でも……」
「ついでに、異性の身体が堪能できるのはお得だと思うぞ」
「……」
 ジト目で見られたら照れるじゃないか……。
 という、少年をからかっていたいところだが、気になる人物が一人。
 あのウェイトレス。
 男性になっているはずであるが……お、バックヤードから出てきた。
 トレーを持つ美形の少年。光の粒子を巻き降らしても誰も文句を言わないであろう容姿。"ドジ"という言葉などとは縁遠い振る舞い。
「会長。あの店員に何かあるんですか?」
"彼"を観察していたことが少年にもわかったのか、言葉をかけてくる。
「いや、な。随分といきいきしてるなと思ってな」
「あー、確かに」
 笑顔を絶やさず、軽やかにステップ。
 まるで、新しい自分に生まれ変わったのではないかという動きをしている。
「まあ、あくまで推測でしかないし、言及もしようとも思わないがな」
「え、何ですか? 変化に気がついているのであれば――」
「いや、彼女にとってはこれが望んでいる世界なんだ。変化を自覚している人間が他にいると知ったら、その世界を壊すことになるのではないか?」
「そうですが……」
「それにもし彼女が変化を自覚している者であれば、他にもその境遇の人間がいるのではないか?」
「ええ、まあ、そうですね」
 彼女は"ドジ"というコンプレックスを解消したいと想ったから、"彼"になることができたんだ。その邪魔はけして出来ない。
「もっとも、尋ねたところではぐらかされそうだがな――ッ!?」
「どうしました」
 今……もしや。
 ふと、窓の方に視線を移したら、ファミリーレストランすぐそばの歩車分離式交差点を行き交う人々の中に、見覚えのある者の姿が目に入った。
 気弱そうでかつ真面目そうな容姿。
 手には紙袋を持って、買い物でもしていたのだろうか。
 その姿は北見少年そのもの。
「どうしたんですか? 窓の外をじっと見て。口が開いてますよ」
「ああ、そうだな」
 ぽかんと口が開いていたが、歯を合わせ、口端を持ち上げる。
「少年、やっぱり世界は狭いぞ」
「え、会長? 立ち上がってどうするんですか?」
「ああ、時は一刻も争う」
「え……ええ……ッ!?」
 席を立つ。荷物は……このままでいいか。
"彼"にすぐ戻る旨を伝えて、ファミリーレストランから出る。
 後ろからは、少年が頭に大きな"?"を浮かべて後ろからついてくる。
 北見少年の身体は誰が使っている?


 その誰かの渡った交差点を私たちは渡り、懸命に追いかける。
 きっと、駅の方へと向かっていったに違いない。
 私は早足で、少年は走るようについて来てくれる。
「か、会長……そんなに急いでどこに?」
「いたんだよ」
「え?」
「少年の姿をした何者かが」
「え、ええ!?」
 ここにきて、ようやく少年は理解する。まあ、理解するも何も私が説明しなければ、少年はただついてきたことになってしまうが。
 駅に入り、やっと後ろ姿を確認することができた。
 すでに南高の生徒が少ない南高の最寄り駅。
 後数歩で改札を通ってしま――
「北見冬樹ッ!!」
 少年が声を張り上げる。
 自らの名前を大声で。
 当然、周りにいた者はなんだなんだとこちらに視線を向けるがすぐに前を直り去っていく。
 そして、肝心の"彼女"は、
「――ッ!?」
 まるで幽霊を見てるような表情をしているかと思ったら、半ば駆けるようにこちらへと向かってくる。
「助かったよ、少年」
「ええ、少し恥ずかしかったですが」
"彼女"がすぐそこ、私たちが触れられるところまで来て、放つ一言、
「なんで、わたしが……」
 確信した。"彼女"も、私たちと同じだ!
「いかにも、私は西沢春香」
「僕が北見冬樹です」
 それでも、まさか会えるとは思わなかった。
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