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あの青空に祈りを捧げ 第11話


・彼女との関係は

*

月見野優衣、当時中学一年生。俺が研修医だった時に始めてであった。25歳の春だった。

引退間近の上司監修の下、俺は優衣の検査をした。

レントゲン等の結果。最悪なものだった。片方の肺の機能が全くといっていいほど働いていなかった。もう片方の肺も、いつ機能を停止してもおかしくはなかった。俺は、優衣の母親・父親に告知をした。母親は泣き崩れ、父親には「どうにかならないかと」怒鳴られた。

どうにか、二人をなだめて、優衣の入院が決定した。

優衣は素直で大人しくて、非常に俺は接しやすかった。趣味は読書。しばしば外出をして、近くの図書館へ行っていた。俺にお気に入りの箇所の朗読もしてくれた。

ある程度、検査をしたところで両親の同意を得て、手術を試みた。彼女には体力があり、もしかしたら機能を取り戻すかもしれない。上司との相談の結果だ。

研修医として、手術に参加。ところが手術中に問題が起きた。針が通らない。

優衣の肺の細胞組織は弱く、通したところから抜けていく。酷いものだった。結局、何も成果が出なかった。それだけでなく、優衣の体力は大幅に落ちた。少し激しい運動をしただけで、息切れを起こすようになった。

図書館に行く程度の体力はあるのだが、母親はそれを許さず、彼女は外出禁止となった。俺は優衣から楽しみを奪ってしまったのだ。

けれども優衣はそんな俺と何事もなく接してくれた。俺の唯一の救いだった。

優衣を救うには肺を移植するしかない。母親は自分の肺を提供するといった。俺も上司も承諾した。後は、彼女の体力を取り戻すだけだ。


こんな関係が二年ほど続いた。

俺が26歳。優衣は中学三年生になった。しかし、中学生というのは形だけでここにきてから一度も行っていない。

俺は無事研修医を脱出。ようやく、医者を本格的に語れるようになった。それと同時に、上司は定年退職。優衣の主治医は俺で決定された……いや、押し付けられたといっても過言ではないだろう。肺に爆弾を抱える患者を診たいと思う奴はいない。だから、一番近かった俺になったのだ。

俺は勉強をした。技術も得た。優衣を救うためだけに。人生をかけてもいいと思った。

四季をめぐっていくうちに優衣との関係はもっと深くなっていった。俺は、周りにばれないように外出をさせた。

両親から承諾は得ていないが、十分な体力はあった。ただ、心配なので車椅子を使用して……だ。

まだ、両親は知らない。ばれたら、俺は即クビだ。リスクを負ってまでも、俺は優衣に外出を許した。


優衣は結局受験は出来ないまま、16歳を向かえた。その夏。大きな問題が発生した。
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